この記事を読むと、不動産価格の査定方法が分かります。
こんにちは。不動産営業の教科書こと井口(@FudosanKyokasho)です。
不動産営業をやっていたら、査定依頼を受ける事もあると思います。その時「この物件、どのように査定すれば良いんだろう?」と悩む事は無いですか?
そこで今回は、不動産を査定する際によく用いられる3つの方法についてお伝えします。
・不動産価格を査定する際に何からやれば良いか分からない
・不動産価格の査定方法を知りたい
【この記事は動画でも紹介しています】
それでは詳細についてお話していきます。
不動産の査定方法
不動産価格査定には、取引事例比較法、原価法、収益還元法があります。それぞれの特徴や違いについて説明します。
原価法
原価法は、建物を新築した場合の建築費用や土地の価値から算出されます。建物の査定には、設備や仕様、築年数、修繕履歴などを考慮して減価償却された残存価値が使われます。
一般的な原価法の計算式は以下です。
査定価格 = 建物の原価 – 経年劣化分
具体的な手順をお伝えします。
原価法の計算式:
査定価格 = 建物の再建築費用 – 経年劣化分
具体的な手順:
- 建物の再建築費用の算出:これは、当時の建築費用や標準建築費を基にして算出されます。建物の広さ(平米数)や建設時の費用単価を考慮して、建物の原価を求めます。
- 経年劣化分の算出:これは、建物が経過した年数に応じて減少する価値を表します。通常、建物の経年劣化は一定の割合で評価されます。不動産会社の査定基準によって経年劣化率が異なる場合もあります。
- 査定価格の算出:建物の原価から経年劣化分を差し引いた値が査定価格となります。この査定価格が、再度建築した場合に実際に売れる価格の推定となります。
具体的な数値を用いて計算してみましょう。条件は以下とします。
・当時の価格が1㎡あたり10万円で、100㎡の土地に建てられた建物
・耐用年数が30年
・築年数が10年
これらを元に手順によって算出してみます。
- 再建築費用 = 当時の価格 × 総面積
= 10万円/㎡ × 100㎡
= 1000万円 - 経年劣化分 = 再建築費用 × 経年劣化率(原価率)
= 1000万円 × (10年/30年)
= 333万円
※建物金額の査定するにあたり、経年劣化率(原価率)以外に、建物グレードによる品等格差率や建物規模補正率などを考慮して査定することもあります。 - 査定価格 = 再建築費用 – 経年劣化分
= 1000万円 – 333万円
= 667万円
つまり、査定価格は667万円です
ただし、原価法は建物の評価を導き出す際に一般的に使用される手法であり、土地と建物を別々に査定するのが一般的です。つまり、建物の評価は主に原価法に基づいて行われますが、土地の評価は取引事例や相場を参考にして行われるという事が多々あります。
取引事例比較法
取引事例比較法は、実際の不動産取引の事例を調査し、それを元に評価を算出する方法です。
不動産会社は、過去の取引事例から土地や建物の評価基準を把握することができます。具体的な土地の制約事例や建物の事例を調査し、直近1年間などの近隣の事例を参考にします。
実際の取引事例に基づき価格を査定するため、「市場性」に着目した手法であるといわれます。この方法では、焦点を絞って比較評点表を作成し、対象地と制約事例の評価値を比較します。
比較評点表とは、下記の観点で評点付を行って比較する手法です。
制約事例に対して重み付けをし、その結果を土地の評価に反映させます。
居住用のマンションの場合、取引額事例法がよく用いられます。同じマンションの取引事例を参考にし、階数や条件の違いによって査定します。
収益還元法
収益還元法は、賃貸物件の査定に使われます。賃貸収入から、管理費や修繕費、税金などの経費を差し引いた純収入を基に、物件の価値を算出します。
収益還元法は、建物から得られる賃料収入を基に査定する手法です。例えば、年間に10万円の賃料が入ってくる場合、年間の収益は120万円となります。
この収益に対して、周辺の取引で使われている利回り(収益の割合)を考慮して査定を行います。もし周辺の物件が10%の利回りで取引されている場合、物件価格は1200万円となります。
このように収益還元法では、実際の収益から周辺の取引事例を参考にして価格を決めることが重要です。
事例物件が無い時の査定方法
具体的には、国土交通省が提供している土地総合情報システムを利用して、不動産取引の価格の目安となる情報を検索することができます。また、路線価も参考になる要素です。
これらの情報を基に、最終的な取引価格の目安を導き出すことができます。
制約の事例が近くにない場合、不動産鑑定士などが実際の取引を元に公開している価格情報を参考にすることも多いです。このような情報をもとに、査定書として提案することが一般的です。
ただし、この方法はあくまで目安であり、正確な価格を出すためには、より詳細な調査が必要です。
査定報告書に入れるべき資料
お客様が現在の状況をどの程度まで把握しているかが、重要な要素です。
もし売却の意思がないけれども、査定してほしいと言われた場合は、成約事例とそれに応じた金額を考慮し、現在の市場相場に基づいて簡易的な査定を行うことが一般的です。
厳密に言えば、制約のある事例に対して、比較評点表などを用いてポイント評価を行い、その制約事例との比較に基づいて、坪単価や㎡単価を適用するという手法が適しています。
その他にも、公的な資料として謄本・字図・知的測量図・建物の図面などを付け加えてもらえればより高い精度で査定する事ができます。
事例物件だけでなく、現状も考慮した査定シナリオの作成がポイントとなります。
お客様によっては、どのように査定するのか気になる方もいらっしゃると思うので、査定方法の説明ができるようになることが望ましいです。
まとめ
今回は不動産価格査定について3つの方法を紹介しました。それぞれの方法は、異なる視点からのアプローチですが、公平で合理的な取引価格を導くために重要な手法です。
正確な査定と適切な根拠の提示は、営業担当の方の信頼性を高めることにも繋がります。ぜひ3つの査定方法をマスターしてください。
今後も私たちはブログやYouTubeを通して情報発信していきます。こうした場を利用して学びを深め、よりスムーズに取引ができるようになって頂ければと思います。
もし不安な点があれば、私たちにご相談ください。今回お伝えした事が、皆さんの営業の一助になれば幸いです!
当メディア「不動産営業の教科書」では、不動産営業の方々に役立つ情報をお伝えしていきますので、ぜひYouTubeチャンネルや、別の記事も参考にしてみてください。
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また、この度「不動産営業の教科書」が電子書籍になりました。ブログでは伝えきれない基本的な事や、不動産営業のプロとして知っておきたい事など、私が不動産営業を始めたばかりの時に知りたかった事を存分に載せています。
✔公認不動産コンサルティングマスター
✔MBA(経営学修士)
✔ファイナンシャルプランナー
✔パーソナルファイナンス教育インストラクター
✔剣道7段